労働相談・Q&A

 現在、労働組合への加入率は、全国平均で17%、東京でも24%(約4人に1人)に過ぎず、多くの労働者がバラバラにされています。この中で、労働基準法など労働者保護の諸法律を守らず、労働者を使い捨てにする悪質な「ブラック企業」が後を絶ちません。

 その被害に遭った労働者から立川労連・立川地域ユニオンへ、これまでに200件(電話相談のみを加えれば300件)以上の労働相談が寄せられてきましたが、その多くを解決してきました。相手の事業所・使用者側との交渉が必要な場合は、相談者に立川地域ユニオンへ加入していただき、相手側に団体交渉を申し入れて協議し、併行して労働基準監督署やハローワークへの申告なども行います。

 それでも解決しない場合には、簡易な裁判の1種である労働審判や本来の裁判の手続きを取る場合もあります。その際には、立川労連が提携している労働事件に強い法律事務所の弁護士に代理人を依頼し、万全の態勢で裁判に臨みます。

 

民間保育園栄養士へのパワハラの例

 園の給食調理業務を務めているが、私傷事故で休職中という勤続3年半の女性(52歳)から、「職場の先輩職員(複数名)から様々な嫌がらせを受けている。休職中でも園に顔を出せと言われるが、精神的にきつくて復職できる自信がない状況との相談であった。嫌がらせは採用当初からで、「化粧や服装が仕事に来る格好ではない」「年次有給の取り方が身勝手」「仕事ができない人はやめて欲しい」「発達障害ではないか」などの発言が日常的に続いていた。また、終業時刻で帰宅しようとすると「そんなに早く帰りたいのか」と仕事を言いつけられる不払い残業もあった。

 相談者が地域ユニオンに加入し団体交渉を申し込んだところ、園側は弁護士を代理人にした交渉となった。園側は、「パワハラではなく業務上の指導」などと弁解したが、不払い残業問題についてはタイムカードを提示することになった。相談者は色々悩んだ末に退職を決意したことから、ユニオン側が不払い賃金を請求して金銭解決の話し合いとなった。園側がユニオンからの請求額の3分の2相当を解決金として支払う、などの合意書にて決着した。

 

中野区そば屋店員の長時間労働の例

 従業員10人に満たないそば店(有限会社)の住み込み店員(高卒19歳男性)が、朝7時から夜10時まで週6日勤務で時間外労働が月150時間、時間外割増賃金は一切なしで働き、労働条件に疑問を持ち体調不良もあって8ヶ月間で退職。調べたところ、基本給214,446円・社保あり等の求人票は他社の名をかたったもので、実際の基本給は最低賃金ギリギリの16万円で社会保険も未加入であった。

 ハローワークへ行き社保加入の指導をさせるとともに、ユニオンから団体交渉の申し入れを行った。会社との団体交渉が行われ、店長が「時間外労働の未払い賃金がある」と認め、「支払いは社長と相談し回答する」ことになったが、社長が支払いに応じない態度を取り事実上の交渉決裂となったので、地裁に労働審判を申し立てた。ユニオンも弁護士を代理人とし、ひと月当たりで基本給額を超える未払い賃金を請求。会社側は社長が支払いを渋り続けたが、3回目の期日でユニオン側の請求通りに調停が成立した。

 

 

相談は立川労連の電話又はEメールへご連絡ください

労働相談(例えばこんなとき)

Q1. パートには何の権利もない」と言われたが……

 

A1. 日本国憲法第27条に基づいて、最低限の働くルールについて定めた法律が「労働基準法」です。労働基準法第9条に、労働者の定義があります。労働基準法には、正規も非正規も、パートもアルバイトも派遣などの区別はありません。労働基準法の下では、すべてが「労働者」であって、パートであっても、正規の労働者と同じ権利を持っているのです。

 

 

Q2. 突然「解雇する」と言われたが……

 

A2. 解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」があります。「解雇だ」と言われたら、解雇理由を明記してある「解雇通知書」を請求してください。社会的に相当な理由がない不当な解雇がかなり多くあります。解雇されたからと言って簡単にあきらめずに、その解雇通知書を持って、労働組合に相談してください。

 

 

Q3. 「うちには有給休暇なんかないよ」と言われたが……

 

A3. 労働基準法第39条で「使用者は、その雇い入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています。さらに、1年を経過するごとに1労働日を与えることとしています。6箇月間継続して働いていたら、パートもアルバイトも有給休暇が取れるのです。

 

 

Q4. 残業手当が払われない……

 

A4. 労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています(労働基準法第32条)。それを超えた場合、使用者には、平均賃金の25%増しの残業手当(深夜の場合は50%増)を支払う義務が発生します。同時に厚生労働省通達で、労働者の労働時間の管理は事業主の責任で行うこととされています。長時間働いたら、堂々と残業代を請求してください。請求しにくい場合には、労働基準監督署や労働組合に相談してください。また、日々の出勤・退勤の時刻を自分の手帳やカレンダー等に記録しておくようにしましょう。

 

 

Q5. 社会保険をかけてくれない……

 

A5. 「社保完備」として労働者を募集する企業が圧倒的です。この「社会保険」とは、「健康保険」「厚生年金」「労災保険」「雇用保険」の4つがすべて揃っていることが条件です。事業所は、労働者を雇用したら、遅滞なく社会保険を適用することが義務です。

健康保険

週30時間以上(4分の3以上)働く労働者は、加入しなければなりません。

保険料は、本人と事業所で折半です。

医療費の3割は自己負担になりますが、病気などで働けない場合の休業補償制度があります。

厚生年金

 週30時間以上(4分の3以上)働く労働者は、加入しなければなりません。

保険料は、本人と事業所で折半です。退職後の老後の収入となります。障がい年金もあります。

労災保険

労働者を一人でも雇用する事業主は、必ずかけなければならない保険です(強制適用事業)。

業務上のケガや仕事が原因の病気は、健康保険ではなく、労災保険で治療します。

本人負担はありません。休業補償も、平均賃金の8割が治癒するまで保障されます。

雇用保険

退職したときや失業したときの生活保障です。

週20時間以上働く人は、加入する義務があります。事業所負担と本人負担があります。

平均賃金の6割が一定期間保障されます。失業給付を受けなければ、受給資格は継続されます。

 

 

Q6. 労働条件をキチンと教えてくれない……

 

A6. 労働基準法第15条に、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。具体的には文書で労働者に示すこととされています。労働者が要求しても出してくれない場合、労働基準法では「30万円以下の罰金に処する」(労働基準法第120条)となる違法行為です。しっかりと請求してください。

 

 

Q7. 有期契約で働いており、継続して働きたいし、正規になりたいが……

 

A7. 2013年4月1日から労働契約法が改定されて、5年以上有期で働いている人(13年4月以前は対象外)が「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」(労働契約法第18条)となりました。同じ職場(使用者)で5年以上働いた人は、この無期転換ルールに基づいて、契約の更新(継続)を申し込んでください。

 

 

Q8. 上司のいじめがひどくてメンタル疾患になった……

 

A8. メンタル疾患の原因に、長時間過密労働などに続いて「職場環境の悪化」が言われています。2008年の厚労省調査では、323万人がメンタル疾患にかかっていると発表されました。

またパワー・ハラスメント(パワハラ)防止法は、2020年6月1日の施行が決まっており、いじめはパワハラです。裁判で訴えることもできますが、パワハラを証明することは難しい争いになります。パワハラを個人で会社にみとめさせることは、特にメンタル疾患になった人には困難を伴いますので、ぜひ、労働組合にご相談ください。

 

 

Q9. 「女のくせに」と上司から差別されている

 

A9. 労働基準法第3条は、均等待遇として「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならない」としていますし、同法第4条では「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取り扱いをしてはならない」と男女同一賃金の原則を定めています。女性が安心して働ける職場をつくるには、そこの労働者が声を上げて、不法な行為や言動を力を合わせてやめさせる必要があります。そのためにも、労働組合の存在は大切です。

 

 

Q10. 「あなたは請負だから労働法は関係ない」といわれた……

 

A10. 「請負契約」とは、請負人が仕事の成果を提供することを約束し、注文者はその仕事の成果に対して報酬を支払う契約のことを言います。請負会社の社員が、発注先の指揮・命令のもとで、仕事に従事する場合は、「偽装請負」となり、労働者派遣法違反となります。

企業等と直接請負契約を結び、「個人事業主」として業務に従事する形を「個人請負」と言いますが、労働法の規制を免れるために、労働者を「個人請負」と詐称して不当に安く働かせる事例も多発しています。最高裁判所の判決では、契約書がどうであれ、労働の実態に「労働者性」があれば、労働者とみなすとされています。それを導き出す基準は、いくつもあります。

 

 

Q11. 「会社を辞めるなら損害賠償を払え」と言われた……

 

A11. 労働基準法16条では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。「資格を取らせてあげるから、3年間は退職しないこと。万一退職する場合は、講習費用の倍額を払うこと」などの取り決めは無効になります。

労働基準法の規定で、企業が労働者を解雇する場合は、1カ月以上前に告知することとされていますが、労働者が自分の意志で退職する場合は、民法で2週間前に通告すればよいことになっています。